ソフトウェア開発の会計実務Q&A
].工事契約会計基準及び棚卸資産会計基準の適用及び内部統制対応に関して

Q47.ソフトウェアの棚卸資産の適用する会計基準はなんでしょうか?

:当社では、従来より市場で販売する目的のソフトウェアの製造販売を中心に業務を行っていましたが、近時諸会計基準が公布され、どの基準を適用するのか迷っています。現在、顧客からの注文を受けて、販売管理システムを顧客仕様に合わせてソフトウェアの開発を請け負っています。また、当社の営業が企画提案して顧客の広告宣伝のためのソフトウェアを開発しています。これは顧客の予算の範囲内で当社が企画して実現したもので、ソフトの仕様や完成品の内容は当社に任されています。これらのソフトウェアの開発に当たって、採用すべき会計基準は何になりますでしょうか?なお、当社では株式上場を目指しており、金融証券取引法に基づく会計処理を取り入れようとしています。

A47.貴社のソフトウェア開発業務の内、販売管理システムは「工事契約に関する会計基準」を、企画提案の広告宣伝用ソフトウェアは「棚卸資産の評価に関する会計基準」を適用することになります。

:ソフトウェア開発を巡る会計基準は、「研究開発費等に係る会計基準」が中心となります。そこでは、誰が開発したかは問われず、ソフトウェアの目的により区分され、市場販売目的のソフトウェアや自社利用ソフトウェアは固定資産として取り扱われています。請負ったソフトウェアの開発は、請負工事の会計処理に準ずることになっています(同基準4)。

受注ソフトウェアは、顧客に納めるソフトウェアですので、その制作過程では、棚卸資産となり、納品時には棚卸資産から売上原価に振替えることになります。制作途中では棚卸資産ですので、「棚卸資産の評価に関する会計基準」を適用することになります。

 但し、その請負った仕事の完成に対価が支払われる契約であって、基本的な仕様や作業内容を顧客の指図に基づいて行うものは「棚卸資産の評価に関する会計基準」に優先して「工事契約に関する会計基準」を適用することになります。

(1)棚卸資産の評価に関する会計基準の特徴

@ 期末における棚卸資産の評価基準についてのみの基準で、評価方法等を定めている訳ではありません(基準1)。

A 全ての企業の棚卸資産に適用するが、他の会計基準で収益性の低下が反映されていればそちらを優先して適用します(基準27)。

B 正味売却価額(売価−(見積追加原価+見積直接販売費))が期末帳簿価額より下落している場合に、差額を費用として計上し期末帳簿価額を正味売却価額に修正します(基準5・7)。これは、原価法の枠内での収益性の低下に基づく評価損という扱いになります。

 

(2)工事契約に関する会計基準の特徴

@ 期末における棚卸資産の評価基準についての記載もありますが、請負業務についての収益・原価の会計処理(進行基準・完成基準の適用等)についての規定が中心となっています(基準1)。

A 棚卸資産のうち、「請負った仕事の完成に対価が支払われる契約であって、基本的な仕様や作業内容を顧客の指図に基づいて行うもの」が適用になり、該当すれば他の基準に優先して適用となります(基準2・4・5)。

B 工事契約単位毎に、収益額・原価額・進捗度の確実性を検証し、確実であれば進行基準を採用し、確実性が確保できなければ完成基準を採用します(基準9)

C 将来の損失が見込まれる場合には、それを引当金として計上します(基準19)。

*進行基準については、Q&A7−1をご参照ください。

 

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