ソフトウェア開発の会計実務Q&A
].工事契約会計基準及び棚卸資産会計基準の適用及び内部統制対応に関して

 Q50.分割検収がある場合に、分割検収毎の完成基準の採用か全体での進行基準での採用か?

:当社では、発注元のA社から5段階のフェーズからなるソフトウェア開発の契約を締結しました。フェーズの区切りが、その都度の成果物の完成が要求されておらず、作業割合でフェーズを区切っているだけです。金額はフェーズ毎に確定しています。この場合に各フェーズ毎に売上を計上すべきでしょうか?それとも全体として進行基準を採用し進捗状況に応じて売上を計上すべきでしょうか?また、各フェーズ毎に進行基準を適用して売上を計上すべきでしょうか?各フェーズの作業期間は3ヶ月〜6ヶ月であり、重複する期間もありますが、全体としては2年間のプロジェクトです。なお、当社には工事を完成させる能力がありそれを阻害する要因は存在しないと考えております。また、工程管理も適切に行っており原価見積・進捗管理に問題はないと考えております。

もし、同様な契約ですが、フェーズ毎に工事契約ごとの認識が出来る場合はどうなりますでしょうか?他の条件は同じです。

A50.ご質問の場合、各フェーズが区切られていますが、それぞれに成果物の要求がなくフェーズ毎の請負の判定は困難であること、一連のフェーズが全て当社に来る契約になっており、且つ工事進行基準の採用を阻害する要因も無いことから、契約全体での工事進行基準の採用になると思われます。フェーズ毎に成果物の要求がある場合には、フェーズ毎にも考えることが出来ます。

:まず工事契約会計基準に該当するか、該当する場合に工事契約の認識の単位をフェーズ毎にすべきかフェーズの一連たる契約を単位とすべきかがまず検証する必要があります。次に進行基準か完成基準(それも分割検収)かの何れの採用となるかの検証が必要です。

(1)工事契約に係る認識の単位

締結された契約書は、工事の契約を実質的に反映している内容と判断できます。また契約内容を単にフェーズに分けただけと考えられ、例えフェーズ毎に納期・金額・仕様等が区分されていたとしても、一連のフェーズも当初から確定され、逆に別の工事契約とは認識する事は困難ですので、契約書記載事項が工事認識単位と考えるべきと判断します。

(2)進行基準か完成基準か?完成基準の場合フェーズ毎のいわゆる分割検収の完成基準の適用は可能か?

@分割検収とは、「1つのソフトウェア開発プロジェクトをいくつかのフェーズに分けて契約を締結し、各フェーズ毎に検収を行う」とされています(ソフトウェア取引の収益の会計処理に関する実務上の取扱い(実務対応報告第17号)2(3))。仕様・納期・金額と全てが契約で明記されていますのでフェーズ毎の納品検収が終了すれば「投資リスクからの解放」がありますので、分割検収での売上は可能となります。

 しかしながら、分割検収は言葉を変えて言えば「部分完成基準」であり、工事完成基準の一典型です。ですので、工事進捗基準か工事完成基準かの判断がまず先にあり、工事完成基準とされた場合に分割検収があります。

A工事進行基準の3つの要件・工事収益総額・工事原価総額・工事進捗度の確実性があれば工事進行基準を適用し、要件を満たさない場合には、工事完成基準を適用するとなっていますので(工事契約会計基準9)、本問の場合には、進行基準を採用するにそれを阻害する要因は考えられないということですので、工事進行基準の適用という判断となります。

 もし進行基準の適用を阻害する要件があれば完成基準になります。その場合工事の認識単位が契約全体ですので、最後の完成まで売上を計上することが出来ませんので、分割検収売上を考えている場合には、契約(特にフェーズの区分)と原価見積及び進捗管理体制を整備運用する必要性が高まります。

(3)もし、フェーズ毎に工事契約ごとの認識が出来る場合

ここで仮に同様な契約ではありますが、各フェーズに成果物の納品義務があった場合には、どうなりますでしょうか?他の条件は同様です。

各段階でのフェーズはそれぞれフェーズ単独での納期どおりのソフトウェアの完成が要求され、金額も確定することになっているのですから、それぞれのフェーズで考えるべきでしょうか?でも全体的に俯瞰可能であり、且つ当社に来るフェーズがはっきりするので、契約全体を認識することも考えられます。質問の場合には、フェーズ毎で考える余地が無い為、契約全体で考えましたが、フェーズ単独で考えることができ且つ全体でも考えられる場合です。どちらが合理的かということになるかと思います。

 

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