ソフトウェア開発の会計実務Q&A
].工事契約会計基準及び棚卸資産会計基準の適用及び内部統制対応に関して

Q53.受注制作のソフトウェアの工事進行基準の適用条件と工事損失引当金の法人税法上の取扱いについて、教えてください。

 当社はソフトウェアの開発を請負っております。近時工事請負の税務上の取扱いが変わったそうですが、当社の業務は税務上の取扱いではどの様になりますでしょうか?赤字が見込まれる受注制作も工事進行基準を採用できますでしょうか?工事損失引当金は損金算入可能でしょうか?また消費税の取扱いも教えてください。

 

A53.受注制作ソフトウェアの収益計上も工事請負と同様な扱いとなります。赤字でも工事進行基準を適用できます。工事損失引当金の繰入額は損金に計上できません。

:平成20年度に法人税法・法人税法施行令・法人税法基本通達の該当箇所が変更になっていますので、順を追って説明いたします。

(1)受注制作のソフトウェアは工事請負の収益費用の規定に該当するかどうか?

平成20年4月1日に改正された法人税法64条では、それまで工事に含まれていなかった「ソフトウェアの開発」が含まれることになりました。また、同年4月30日改正での法人税法施行令第129条第1項でも同様です。同年7月1日の法人税法基本通達の改正では、それまで工事に含まないとされていた「ソフトウェアの制作等」が外されています(基本通達2−4−12)。

(2)工事進行基準の適用条件

@工事進行基準の強制適用

長期大規模工事は工事進行基準の適用が義務付けられていますが(法人税法64条第1項)、長期大規模工事の定義を、それまで工事期間が2年以上で請負金額が50億円以上であったのが、工事期間が1年以上(法人税法64条第1項)、請負金額が10億円以上(法人税法施行令129条第1項)となりました。

A工事進行基準の任意適用

上記長期大規模工事以外の工事については、特段の強制はなく任意の適用が認められています(法人税法64条第2項)。

(3)赤字見込み工事の工事進行基準の適用について

従前、工事進行基準では「損失が生ずると見込まれるものは除く」とされていましたが、平成20年4月1日の法人税法の改正では該当部分が削除されていますので(法人税法64条第2項)、赤字見込み工事でも工事進行基準は採用できるものと考えられます。

(4)工事損失引当金の繰入額は損金に算入できるか

工事完成基準及び工事進行基準でも将来の損失が見込まれた場合に、これを引当金として会計上は処理することが要求されていますが、法人税法上は損金算入が可能な引当金は、貸倒引当金と返品調整引当金のみですので、工事損失引当金での損金算入は認められません。なお、上記赤字見込み工事の進行基準適用は損失の早期計上の容認ですが、これと引当金の費用処理とは別の取扱いと考えるべきものと思います。

(5)消費税の計上時期の取扱い

@課税売上の考え方

・法人税法で完成基準を採用している場合・・・相手方に引渡した時期(消費税法基本通達9−1−5)。

・法人税法で進行基準を採用している場合・・・収益計上した時期(消費税法17条第1項第2項)若しくは相手方に引渡した時期(消費税法基本通達9−4−1)。

*工事の長期大規模の有無は関係ありません。

A課税仕入れの考え方

完成基準・進行基準の採用の如何を問わず、仕入れた時に仕入税額控除となります(消費税基本通達11−3−5)。但し継続適用を条件として「目的物を相手方に引き渡した時期」での仕入税額控除とすることができます(同通達同条項)。

ホーム

 

 

ソフトウェア
原価計算システムはこちら