ソフトウェア開発の会計実務Q&A
U ソフトウェア開発の原価計算 Q5〜Q22

Q14. 全部原価計算と直接原価計算方法の違いは何でしょうか?

:当社は該当プロジェクトに直接かかった費用原価だけをプロジェクトに集計したいのですが、これは認められますでしょうか?また間接費を含んだ原価計算と含まない原価計算の違いを教えてください。

A14.

結論:厳しいです。先に述べた管理会計では会社の任意で勝手にできますが、財務会計では間接費を含んだ全部原価計算が一般に公正妥当と認められた方法であって、間接費を含まない直接原価計算は認めないというのが一般的です。

説明:全部原価計算と直接原価計算の違いは、端的に言いますと間接費を原価計算対象の範囲に含めるか否かです。含めるのが全部原価計算・含めないのが直接原価計算です。

直接原価計算は、原価費用を売上或いは操業(作業)に比例して発生する変動費と関係のない固定費に区分します(なお、区分が困難な準固定費を回帰分析などの統計計算で区分させる方法がありますが、ここでは説明は略します)。それぞれの損益計算書の雛型を示しますのでご覧になってください。なお、販売費及び一般管理費を含めて区分するかどうかの議論がありますが表の変動製造マージンや貢献利益を使い、考え方を統一すればどの段階の利益を使うかは会社の任意です。

  全部原価計算の損益計算書

 

  直接原価計算の損益計算書

売上高

 

XXXX

 

売上高

 

XXXX

売上原価

 

 

 

変動売上原価

 

 

期首製品

XX

 

 

期首製品

(変動費)

XX

 

当期製品製造原価

XX

 

 

当期製品製造原価(変動費)

XX

 

XX

 

 

XX

 

期末製品

XX

XXXX

 

期末製品

(変動費)

XX

XXXX

売上総損益

 

XXXX

 

変動製造マージン

 

XXXX

販売費及び

     一般管理費

 

XXXX

 

変動販売費

 

XXXX

営業損益

 

XXXX

 

限界利益

 

XXXX

 

 

 

 

固定費(製造)

 

XXXX

 

 

 

 

固定費

(販売費及び一般管理費)

 

XXXX

 

 

 

 

営業損益

 

XXXX

ところで、一般に公正妥当と認められた原価計算というのは何でしょうか?原価計算基準というのがあります。これをよりどころにすると、

@     昭和37年に企業会計審議会によって制定された「原価計算基準」は、同基準の前文にもあるように、企業が遵守しなければならない一般に公正妥当と認められる会計の実践規範である。

A     同基準六原価計算の一般的基準(一)において「すべての製造原価要素を製品に集計し…以下省略」と、直接費だけではなく、一定の給付にかかる間接費も集計の対象となっている。

と全部原価計算が正しくなってしまいますが、

直接原価計算を主張する人からは

@     原価計算基準の前文にあるように、「企業の原価計算制度は、真実の原価を確定して、財務諸表の作成に役立つとともに、原価を分析し、これを経営管理者に提供し、業務計画および原価管理に役立つことが必要とされている。(略)」、いずれの計算目的にも役立つように形成しなければならないと考える。同前文の後半には「この基準は個々の企業の原価計算手続きを画一に規定したものではなく、(中略)この基準が弾力をもつものである理解のもとに、この基準にのっとり、業種、経営規模その他当該企業の個々の条件に応じて、実情に即するように適用されるべきもである。」とされていることから、当社の業種は、昭和37年当時に想定された製品を製造している業種ではないことから、全部原価計算に拘らず、直接原価計算を採用したいと考えている。

A  当然に直接原価計算を採用するならば、今後とも一定の計算秩序としての常時継続的に行われることを認識している。との主張もあります。

私見ですが、もう経理財務を行う人に対する原価計算の啓蒙という概念はなくなり、一般に公正妥当という曖昧な概念も日々変化しているはずですので全時代全企業に画一的に適用するのはどうかと思われます。本書はこの議論をするのではなく議論の存在を知った上での実務を記載する目的ですので、実務的対応としては財務会計は全部原価計算、管理会計は直接原価計算と割り切って行うことも考えられます。

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