ソフトウェア開発の会計実務Q&A
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ソフトウェア開発の原価計算 Q5〜Q22
Q9. 配賦すると全体像が分かりづらくなりませんか?
:当社では原価計算はプロジェクトに配賦しなければならないと聞き実施していますが、按分してしまうと当初の発生額が分からず、何の費用なのかどのコストを削減してよいかが全くわからない状態になっています。何か良い方法はありませんか?
A9.
結論:
(1) 人件費については
@各人毎の人件費をプロジェクト毎の作業時間で按分するか、
A人件費単価×プロジェクト別作業時間でプロジェクトに賦課する方法が考えら得ます。
(2)経費については
@可能な限りプロジェクトに直課する。できない場合でも最初に無理にでもプロジェクトに按分した上で(原価計算上の按分ではなく)、各プロジェクトに直課する。
Aソフトウエア開発会社の多くで、各プロジェクトには作業時間に経費(間接費)単価を乗じて集計し、人件費や経費の実際の発生はその他のプロジェクトに集計している場合があります。
説明:
人件費計算は作業時間でプロジェクト別計算しなければいけませんが、按分でもそれは実際単価による原価計算ですし、各人毎の人件費単価×作業時間で各プロジェクトに賦課する方法も全体金額とプロジェクト毎の金額に作業時間の関係が明確なので分かり易いですが。経費については発生した額とプロジェクト毎の金額に按分の基準によって分かりずらくなる可能性があります。上記結論の@が当方は分かり易いとは思いますが、人件費中心の会社では、A即ち各プロジェクトは金額表示であるが作業時間にてコスト管理して、実際の発生額は総額で別途管理する方法でも良いと思っています。
財務会計では原価計算を価値移転の計算として捉えていますが、任意での管理会計ではどのような方式でも採用できます。ただ事務負担の観点から財務会計で認められている範囲である上記@かAの方法のいずれかの採用が望ましいと思っています。
なお、どうしても配賦計算を行う必要がある場合には、配賦に際しては次のQ&A10で述べます直接労務費や製造間接費等の複合勘定を使用し給料等の原価要素勘定は使用しない方法をお奨めします。この方法では配賦した額・配賦された額は各プロジェクトでは表示されますが、プロジェクト全体を通しますとその複合勘定は0となり原価要素勘定のみが残ります。