ソフトウェア開発の会計実務Q&A
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ソフトウェア開発の原価計算 Q5〜Q22
Q11. 実際原価計算と予定原価計算とどちらを採用したら良いでしょうか?
:実際原価計算と予定原価計算の選択ですが、時間単価について実際単価か予定単価かということで作業時間は実際の作業時間と理解しています。甲社は製造業です。乙社はソフトウェア開発業です。それぞれどちらを選択したらよろしいでしょうか?原価差額の調整の観点および経営管理から教えてください。
A11.
結論:単価と時間の関係はご質問のとおりです。実際原価計算は原価差額の調整は不要だが、経営管理には不便であり、予定原価計算は経営管理では有用だが原価差額の調整は不便であり、結論は会社がどちらを優先させるかです。
(1)原価差額の調整の観点から
@ 甲社の場合、予定単価を行って場合発生する原価差額は期末において売上原価・製品残高・仕掛品残高を基準に調整することになります。従い予定単価を行ってもさほどの労力はかかりませんので、実際原価計算でも予定原価計算でも構いません。
A 乙社の場合で、仕事の内容が完成した製品が顧客に帰属するような請負作業ならば甲社と同じように考えて問題ありません。もし、完成した製品が自社で利用する事や販売する目的で自社に帰属する場合には、ソフトウェアとして無形資産に計上することになり、資産計上されたソフトウェアは完成し役務提供時から償却をする必要があります。月次で償却する場合に年度末での一括原価差額調整はなじみません。予定原価計算を行っている場合に月次で原価差額の調整が必要かという議論も出てきます。この場合には、実際原価計算で行っておいた方が便利かもしれません。ただ、予定原価でも実際原価と同じ結論になるような精度の高い場合には(原価差額が僅少な場合には)、償却対象資産の取得価額も予定原価のままで原価差額を取り込まなくても構わないはずです。
(2)経営管理の観点から
プロジェクト別賦課基準を各人毎の作業時間とした場合、実際原価計算は、実際の発生額を実際の作業時間で除して単価を出し、それにプロジェクト毎の実際の作業時間を乗ずる方式ですので、発生金額が毎月固定でも作業時間が月により増減すると実際の単価はブレてしまい金額ベースではプロジェクト管理は行いづらくなります。例えば人件費月額30万円の丙さんはある月はAプロジェクトに20時間、Bプロジェクトに10時間合計30時間作業したとして、Aプロジェクトに賦課される金額は20万円、Bプロジェクトのそれは10万円です。これが別の月にAプロジェクトに20時間、Bプロジェクトに10時間、Cプロジェクトに10時間の合計40時間作業したとしますとAプロジェクトに賦課される金額は15万円で、同じ作業時間でも賦課される金額が異なってきますので、金額ベースでの管理は難しくなります。ところが予定単価は決まっていますので実際作業時間がブレても賦課される金額が一定です。当方の私見ですが、私でしたら予定単価を使い必要であれば毎月原価差額を調整すれば問題は解決すると考えます。