ソフトウェア開発の会計実務Q&A
Y 販売目的ソフト開発業務のフロー
Q36. 販売目的ソフト開発業務の各段階での会計処理を教えてください。
:販売目的ソフトの開発業務を行っている会社の会計仕訳を実際原価計算と標準単価を使った予定原価計算に区分して説明してください。
A36. Q&A31の各段階での会計処理をQ&A21、22の実際原価計算と予定原価計算に区分けして記載します。
原価計算の概要 |
実際原価計算A社(人件費・間接費の実際発生額を各人の作業時間によってプロジェクト毎に配賦する原価計算を行っています) |
予定原価計算B社(各人毎に人件費・間接費の標準単価を持ち作業時間によってプロジェクト毎に賦課する原価計算を行っています) |
試験研究 プロジェクトの登録 |
自社利用ソフトの開発や販売目的ソフトの開発は、派遣業務や請負業務比して割と自主研究開発業務を行うケースが多いです。項を改めて説明しますが、税務上、試験研究の範囲については「製品の製造」又は「技術の改良、考案若しくは発明」に係る試験研究のために要する費用で損金経理された原材料費・人件費・経費を言います。このような項目はテーマを取って原価集計すべきです。なお、会計上は、試験研究費の範囲をもう少し広くとる場合もあり、事業化のある正式なプロジェクトの前段階での作業も試験研究費としている場合を見かけます。 会計仕訳は、試験研究プロジェクトに集計された製造原価を販売管理費に振替えます。 借方:試験研究費(販売管理費)×× 貸方:他勘定振替(製造原価)×× |
同左 |
プロジェクトの登録 |
@ 事業化が成立した段階で資産計上すべきプロジェクトが開始されます。 A そのため、A社では勘定体系を簡単に以下のとおり区分しました。 a. 製造原価・・・開発原価→ソフトウェア b. 販売費及び一般管理費(以下販売管理費と呼びます) * 20人規模のA社では、人件費を、人員別に組織上の区分で大きく製造原価と販売管理費と分けるか考えましたが、同一の人物が開発活動も行えば、営業活動も行うため、組織上の区分ではなく、機能別の区分でまず大区分するよう考えました。その結果、直接業務・開発業務・間接業務と区分しました。前2者は製造原価項目とし、間接業務は販売管理費項目としました。一旦製造原価に計上し、その後販売管理項目は他勘定振替で販売費に振替えるようにしました。 * 会計仕訳ありません。 |
@ 同 左
A 同 左
* 同左
* 同左 |
担当人員の決定・参考・ |
特記事項なし。 |
各人ごとの標準単価を期初に設定しておきました。 注: 標準単価の設定方法は、このような方法で算定しました。 以下例示です。 ((給与×2)÷(23×8))×1.5 <説明> <例:月給¥400,000の人の場合> ((400,000×2)÷(23×8))×1.5= 約¥6,500 Q&A20を参考してください。 |
諸経費の会計入力 |
@可能な限りプロジェクトに直課するようにしています。 借方:各経費(プロジェクト別)×× 貸方:現金預金××
注: 地代家賃は製造原価と販売管理に面積比により区分しています。 |
@原価発生時の入力の際には、PJ別には入力しません。 借方:各経費(プロジェクトなし「その他共通」)×× 貸方:現金預金×× 注: 同左
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給与支払時 |
A社は毎月25日に給与支払った際に全員分 a. 借方:給与手当(プロジェクト名「その他」)×× 貸方:現金預金××預り金 ×× と仕訳をしています。A社が使用している市販の会計ソフトは部門とは別に、プロジェクトを持てるように設定はされています。 「その他」プロジェクトは原価計算実施後残高が0となる経過プロジェクトです。 b. 通勤代も同様に、全員分まとめて借方:通勤代、プロジェクト名は「その他」として計上します。 c. その他、アルバイトの雑給・出向費・派遣費等も給与手当と同様にプロジェクトその他で計上します。 d. 賞与繰入額も月末で引当計上しておきます。 e. 社会保険料・労働保険料の法定福利費も給与手当と比例関係にあるので、月末に引当計上しておきます。
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B社は毎月25日に給与支払った際に全員分 a. 借方:給与手当(プロジェクトなし「その他共通」)×× 貸方:現金預金××:預り金 ×× と仕訳をしています。A社と同様ですがプロジェクト使用しないという点に違いあります。
b. 通勤代も同様に、全員分まとめて借方:通勤代、として計上しますが、プロジェクトはありません。 c. その他、アルバイトの雑給・出向費・派遣費等も給与手当と同様に計上します。なお、プロジェクトは入れません。 d. 賞与繰入額も月末で引当計上しておきます。 e. 社会保険料・労働保険料の法定福利費も給与手当と比例関係にあるので、月末に引当計上しておきます。プロジェクトは入れません。 |
原価計算時 |
人件費を各人別各勘定毎に按分します。 金額×プロジェクト作業時間÷総作業時間=プロジェクト配賦金額。 |
人件費及び諸経費を「直接労務費」「製造間接費」という名称で各人毎の作業時間で各プロジェクトに賦課します。 人件費単価×プロジェクト作業時間=プロジェクト賦課直接労務費。製造間接費もこれに準じます。 |
原価計算後仕訳 |
@この時点の会計ソフトでは、人件費は各勘定毎にその他プロジェクトに、集計されたままですので、これを、人件費配賦表に基づいて、各プロジェクトに振り替えます。諸経費は各プロジェクトに賦課されている状態です。 a. 借方:<製>給与手当(プロジェクト名「A」)×× 貸方:給料手当(プロジェクト名「その他」)×× ・<製>給与手当(プロジェクト名「B」)×× 貸方:給料手当(プロジェクト名「その他」)×× ・給与手当(プロジェクト名「人事」)×× 貸方:給料手当(プロジェクト名「その他」)××・・等々続く。
b. 通勤代・アルバイトの雑給・出向費・派遣費等も給与手当と同様に、プロジェクト「その他」から各プロジェクトに振り替えます。 *直接業務や開発業務は製造原価に計上します。間接業務は販売管理費に計上します。 A次に正しく入力されたか、検証します。 a. 会計ソフトのプロジェクト「その他」は、全て振り替えられた後ですので、残高は0であるべきです。 b. 差が生じている場合には、振り替え漏れ・二重計上・金額間違えが考えられますので、振替伝票と人件費配賦表との照合が必要です。 c. 人件費配賦表での数値は、四捨五入計算での数値ですので、端数の不一致が生じます(各人別に行っていますので、人数の約半数の差額が生じます。その差額は、A社においては、全てプロジェクト「総務」にもっていきます。
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@この時点で原価要素毎に人件費・諸経費がプロジェクトに賦課されていない状態になっています。
a. ・借方:直接労務費(プロジェクト名「A」)×× 貸方:直接労務費(プロジェクトなし「その他共通」)×× ・借方:製造間接費(プロジェクト名「A」)×× 貸方:製造間接費(プロジェクトなし「その他共通」)×× *製造原価の勘定科目と仕掛品或いは売上原価の勘定科目の内訳に「直接労務費」と「製造間接費」の科目を作成しておきます。
Aプロジェクトなしの「その他共通」の借方には、原価要素勘定に残高があり、貸方には各プロジェクトに振り替えられた直接労務費や製造間接費があります。この差額が原価差額です。直接労務費や製造間接費は全社ベースですと行って来いの形となりますので0となります。 B原価差額は標準単価で各PJに配賦していますので、実際原価との差額ですので本来調整しなければなりません。、小規模会社なため、そのまま製品原価として売上原価にもっていっていくこともできますが。原価差額を決算時等に調整する場合には、貸借対照表の棚卸資産項目と製造原価の人件費・経費の項目に原価差額勘定を設定し、 借方:原価差額(貸借対照表)×× 貸方:原価差額(製造原価)×× と入れます。結果全社レベルでは原価差額は製造原価に残りません。 |
続く・作業中での資産振替 |
原価が発生しているがまだ未完成なプロジェクトは、貸借対照表無形固定資産のソフトウェア仮勘定に計上します。A社では、ソフトウェアに計上すべきプロジェクトが多い場合ため、ソフトウェア勘定およびソフトウェア仮勘定は補助科目を設定し、プロジェクト名を登録しています。 @仮勘定計上:借方:ソフトウェア仮(貸借対照表)×× 貸方:他勘定振替(製造原価)××
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同左
@ 同左
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β版「製品マスタver0」完成時 |
販売目的ソフト開発では、試作品(ベータ版)の完成までと正式な製品マスターの完成までとを区分する必要があります。 @会計上は、β版完成時点で、それまでプロジェクトに集計されていたものを試験研究費に振替えます(始めから試験研究費でもよいが、税務上のプロジェクト把握のため、一旦プロジェクトに集計した方が便利)。 借方:試験研究費×× 貸方:他勘定振替×× A製品マスタ完成までは、仮勘定計上:借方:ソフトウェア仮(貸借対照表)×× 貸方:他勘定振替(製造原価)×× *なお、試験研究費勘定では、テーマを有している試験研究費とこのようなプロジェクト試験研究費を区分して把握した方が便利です。 |
同左
@ 同左
A 同左
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完成サービス提供時 |
@製品マスタ完成した段階で 本勘定計上:借方:ソフトウェア(貸借対照表)×× 貸方:ソフトウェア仮×× A サービス提供開始時点で 借方:ソフトウェ償却費×× 貸方:ソフトウェア×× なお、償却方法は見込みの使用料や役務提供量をベースその消費割合で償却していきますが、税法は3年定額償却です。なお、ソフトウェアは償却額を直接本勘定より控除するより、有形固定資産と同様にソフトウェア償却累計額勘定を使用した方が便利です。 *なお、会計上と税務上では、原価集計額が異なるため別表での加算修正が必要になります。 |
@ 同左
A同左
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